随分と昔から、エレベーターが喋ります。ぼんやりとカゴの中に乗っていると、急に女性の声で「誤解です」などと言われます。あはは、勿論、これは「5階です」と言っているのですが、一瞬、ドキっとします。思わず、「じゃあ、どういうことなの?」などと会話を成立させたくなります。つくづく孤独な人生です。

中高年向けの求人サイトでは、盛んに「世の中の役に立つ仕事」という美文を伴って「キツイ、給料安い、今日からでもOK」といった3K仕事が紹介されています。そうか、中高年が働くということは「労働条件はよくないけれど、大切な仕事だから、がんばってね」というのが雇用側/社会的な合意で、中高年はこれを甘受するのだぞという「無言の圧力」が掛けられているのだなと考えてしまいます。ムリして動機付けしてくれなくても、犯罪以外はどんな仕事でも「世の中の役に立つ」と思うのだけど。

年を取るということは、それまで感じなかった様々な「無言の圧力」に晒されるということでもあります。まぁ、誰もが「無言の圧力」に掛けられているのですが、「年寄には年寄への無言の圧力」という訳です。

「年寄りは世の中のことに口を出すな」「年寄りは穏やかでいろ」「金持ってるんだろうから沢山消費しろ」「クルマの運転を止めろ」… まぁ、ついこの間まで、私だって、そんな風に思っていたのです。まさか自分が「年寄」になるなんて思いもしなかったなぁ。

今から18年前、かなり古い調査内容ですが、「高齢者のイメージ」というアンケート調査がありました。恐らくですが、最近はいろいろと問題があって、この手の調査は行われていない様に思えます。今年の4月からは年金の繰下げ受給が「75歳」まで可能となったくらいですから、とにかく高齢者には「社会の総意」(除:高齢者)で働き続けてもらいたい訳です。「年金はできる限り遅らせて受給しろ」、これも「無言の圧力」と言えるかも知れません。

それでは18年前の高齢者イメージを見てみます。
※出典:平成16年版高齢者白書 第二章第二節「高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究」より

<高齢者のイメージ> ※選択肢から3つを選んで回答
心身がおとろえ、健康面での不安が大きい(72.3%)/経験や知恵が豊かである(43.5%)/収入が少なく、経済的な不安が大きい(33.0%)/時間にしばられず、好きなことに取り組める(29.9%)/古い考えにとらわれがちである(27.1%)/周りの人とふれあいが少なく孤独である(19.4%)/健康的な生活習慣を実践している(11.3%)/ボランティアや地域の活動で、社会に貢献している(7.7%)/貯蓄や住宅などの資産があり、経済的に余裕がある(6.9%)/仕事をしていないため、社会の役に立っていない(6.2%)

どちらかと言うと「高齢者?よく分からんけど、衰えた人」ということが分かる調査の様に思います。まぁ、関心がないんでしょうね、当たり前です。私だって、今の20代の人たちのことに大して関心がありませんもの。これ、選択肢にどんなものがあったのかを知りたいところです。これが選択肢のすべてだとすると「何だかな」という感じです。

取り敢えず白書における総論を引用しておきます。‘健康面・経済面で否定的に、知識や考え方の面や日常生活面で肯定的にとらえている傾向が見られた。一方で、社会貢献面から高齢者をイメージする傾向はあまり見られなかった。’ だそうです。


「無言の圧力」というのは勝手に「こちら」が感じることなので、このエントリで書いた「年寄りへの無言の圧力」というのも、私だけが思っていることなのかも知れません。本当は「圧力」など何もなく、ただ、「関心がない」というのが実際のところなのでしょう。

「現役」を終えて、多少なりとも気楽に生きているということで何だか「負い目」を感じているというのが、私が感じる「無言の圧力」の根源にありそうです。つくづく幸薄い人生です。

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