「必要なだけ働く」の部分が何一つ決まっていないまま、私は2020年12月に会社に早期退職(3月末退社)を申請し、あっさりとこれが受理されました。昔から状況を見る目が「甘い」私です。当然ながら、この時も通常運転で「甘く」考えていたのです。『中高年の早退』の第2回目は、この後、私が再就職先が決まる2月中旬までの間に、「ハローワーク/職業訓練」にお世話になったことを中心に書くことにします。相当に「心の支え」になってくれたのです。感謝! 尚、今回のエントリ(記事)は少し長いのです。最後までお付き合いいただけるとうれしいです。

<当時の状況を整理しましょう>
早期退職後の再就職に際して、私は「誰にも相談しない、誰にも頼らない、誰にも頭を下げない」ことを決めていました。コネやツテで転職した会社で働き、「自由に生きる」ことが妨げられる様なことになった場合、「自由に生きる」を曲げることになるのであれば、早期就職をしない方がずーっとよいと考えていたのです。加えて、誰かに「あのときはお世話になりました」なんて、生涯言い続けるのはイヤだったのです。そして、今になって思えば、「誰かに再就職を頼んだとしても、いくらでも上手い解決を見つけることはできた」のです。私は早期退職という恐らく生涯に一度のカードを切るに際して、相当に頭に血が上り、パーになっていたのです。前のエントリ(記事)でも書きましたが、信頼できる人にはどんどん頼ることが、再就職の成功、その間の「繊細な中高年の心のケア」にも大切なことです。結果、私は最後まで一人で再就職活動を完走しましたが、(本音では)そこそこに辛かったっす。また、当たり前ですが、あなたが腹の底から信頼している人以外には、決して相談してはいけません。いい加減で有害なアドバイスを頂戴でき、あなたの早期退職への思いは、そんな人の「お喋りネタ」になるだけです。

<生まれて初めてのハロワにショックを受ける>
この記事を書くに際して、過去のgoogleカレンダーを見てみると、私が最初にハローワークに行ったのは年末の12/28で、前の会社の有給消化日の午後のことです。思い出してきましたよ。この頃は「再就職が3月中に決まらなければ、雇用保険をもらいながら職業訓練を受けて、資格を幾つかGETして、再就職に備える」といった呑気なシナリオを考えていたのです。そして、まぁ、年内に様子を見ておくかということで、私が住む地域を所管するハローワークに年末に出掛けたのです。
私が訪ねたハロワは、電車で隣駅まで行き、そこから歩いて15分以上かかる「合同庁舎」的な殺伐とした大きなビルの中にありました。この時点で少し気分が下がっています。職業訓練校についてネットで知ったことを直接に相談窓口で確認したい程度のつもりでハロワを訪ねたのですが、相談となると先ずは「求職者登録」をする必要があったのです。登録用紙を渡され、自分のプロフィールや職歴などを書き込んでいきます。書きながら、自分がもうすぐ「今の会社」の一員ではなくなり、項目別のデータに分解され、データベースに登録される無数の「失業者データ」の一つになることがひしひしと伝わってきます。それに思った以上に自分がどの様な仕事をしたいのかが具体的に書けないのです。そもそも「必要なだけ働く」などという夢見心地のことを考えている訳ですから、現実の「希望内容」にまで落ちていないのです。さらには「経験した主な仕事」という部分で、ピタリとペンが止まります。私がしてきた仕事の多くは、その会社の中だけで存在する極めてローカル性が強いものであり、改めて汎的に書きだすことができないのです。資格欄だけは、ここしばらくの間で幾つか取得したもので埋まるのですが、それも「これまでの仕事」とはまったく無縁のものばかりです。こんな内容の「求職者情報」をみて、ハローワークに求人を出している企業が私に関心を持つわけがありません。ましてや60歳にも手が届かんとするおじいさんですよ。
取り敢えず、ボロボロの内容のまま「求職者登録」を行うと、「ハローワークカード」というのが交付されます。カードといってもカッコいいプラスチックのものでなくA5程度の小さな紙で、番号とバーコードが印刷されています。今後はハローワークで何か相談やデータベース検索をする際にはこれを持参しなくてはなりません。「スキャンしてスマホに画像データを入れて、これを提示するというのは有?」と聞くと「無」と瞬殺されます。これからハロワで求職活動をする際の私とは、小さな「ハローワークカード」に記された番号とバーコードそのものなのです。その日はこのカードを見せて、ハロワの相談員の方に「職業訓練校」の利用について、こんなことを尋ねた記憶があります。①こんなおじいさんも訓練生にいますか?YES ②訓練生の再就職はどんな感じですか?実績データを教えてくれる ③訓練中に就職活動をしてもいいですか?YES ④それで採用されたら中退していいですか?YES ⑤どのくらい訓練校には応募するのですか?現時点での応募数を教えてくれる ⑥試験は難しいですか?過去問題が公開されているから確認してね ⑦学校は見学できますか?見学会がもう始まっているから、都合のよい回に行ってね 大体30分くらいの相談でした。相談員の方は女性でとても感じがよく、少し、心に明かりが灯りました。
ハロワには真剣に仕事を探している様子の若い方の姿も多く、よく転職雑誌で書かれている様な「取り敢えず雇用保険をがっちりもらいましょう」といった言葉にすがりつく「当時の私の様な中高年」は後ろめたい思いでいっぱいになります。けれど、これから再就職が上手く行かなければ、本当にそれにすがる必要があるのです。ハロワ、活字や画像や動画で見るのと直接に相談に行くのとでは大違いです。相当に深刻な気持ちになりますよ。結局、格好いいことを言っていても、収入が途絶えることの恐怖は大きいのです。
求人登録企業がブラックだとか、窓口対応が悪いだとか、いろいろとハロワには悪い評判が多いのですが、本当に追い詰められたら、そんなこと言っていられないのです。「早期退職をして、その後も収入を得なければならない」ということは、石にかじりついても仕事を見つけなければならいということをこの日実感したのです。
ちなみにこの時点で私はまだ1社にも求人応募をしていません。つまり、「最悪の最悪に対して最初に手を打つ」という卑小なサラリーマン技術がここで発動された訳です。しまった、これを保有技術に書けばよかったのか…

<職業訓練校の見学/入学試験>
そして、1月14日と1月28日の2回、家から近いと思われる二つの職業訓練校の見学会に出掛けます。ところが、どちらも「駅からは遠い」のです。普通の住宅地を延々歩いていった先にぽっこりと姿を現します。再就職が決まらなければ、毎日ここまで通うのかと気持ちが凹みます。この段に至っても贅沢にもこんなことを考えているのですから、そもそも私はダメなんですね。
さて、説明会が始まります。二つの訓練校の説明会に行きましたが、ほぼ同じ様子なので、まるっと書いてしまいます。結構に沢山の人(100名程度)が説明会に来ていました。説明会はそれぞれ5回程度?行われていたので、全体だと各校500名程度が説明会に来ていたのかと思います。年齢はかなり幅広く、若い人もいれば、明らかに私よりも先輩の方もちらほら見受けられます。男女比は同じ程度です。服装はほぼカジュアルですが、中にはスーツ姿の男性もいます。仕事の途中なのか、それだけ真剣なのか。
先ずは全体で、学校のあらましや職業訓練に関する基本的な内容の説明を聞きます。二つの訓練校ともに大きな教室な講堂の様な場所があり、既にコロナ禍でもあったので、参加者は適度にバラバラに座り、説明を聞きます。ちなみに「寒い」です。企業の暖かなオフィスとは雲泥の違いです。お国のお金で運営され、授業料は基本無料で、交通費をもらえて、雇用保険がもらえて、更には訓練期間に応じて雇用保険をもらえる期間まで延びるのです。最低限の暖房、私はまったく当たり前に納得しました。まぁ、当日空調が故障していただけかも知れませんが。
全体説明が終わると訓練を希望する訓練コース別に分かれて、それぞれの教室に行き、訓練内容の説明を受けます。私は建物管理関連のコースの見学をしました。講師も訓練生もみな制服(つなぎ)で、スーツでサラリーマンだけをやってきた人たちからすると結構にショックです。肩書も何もなく、見知らぬ人だらけ、特に中高年にとっては同級生の殆どが年下です。こんな中で果たして頑張れるのか。入校希望者の本気度が試されます。実習風景を覗けば、訓練生はみな無口です。当たり前です。皆、無職で、訓練の終了後には何とか職を得なければならないのです。こんな雰囲気、会社にはないものです。1h程度訓練コース毎の説明があり、最後にQ&Aがあって見学会は終わります。Q&Aの中では、中高年に厳しい就職の実態を聞かされたりします。卒業までの間に、訓練生に求人を出している企業が何度か求人説明会を開くそうですが、「若い人から採用されていく傾向が高い」ということなのです。そうだよね… また、卒業を待たずして、就職が決まった人から、順次退校をしていくそうです。何だか、お残り給食みたいで、辛いだろうな。1/28は見学会の後、再びハローワークに行き、入学願書をもらいました。ハロワ、何回いっても気分が凹みます。
ちなみにこの時点でも企業からの求人への応募を私は始めていないのです。私が35年振りに求職活動(求職サイトからの応募)を始めたのは、確か、2月に入ってからだったのです。大丈夫か。いろいろと綱渡りをしていました。ぶんぶく茶釜でもなく、ボリショイサーカスでも、木下大サーカスでもなく。
そして、雪の降る2月16日の午前中に入校試験(設備管理コース)を受けることになります。ネットで確認すると「服装は何でもよい」という意見と「スーツで行け!」という意見があり、そんなときは勿論「堅い方」と教育されていることから、私はスーツで出掛けました。試験の教室では殆どがスーツでした。何となく安心しました。中学卒業程度の数学と国語が出題範囲ですが、国語はともかく、数学は幾何の定理や公式などスカっと忘れており、試験前に勉強をしました。いろいろと脳にダメージが加わります。試験が終わり、面接を受けます。二人の面接官の方が穏やかに対応をして下さり、僅か5分程度で面接は終わりです。雪は上がっていたものの凍える寒さの中、住宅地をとぼとぼと歩いて最寄の駅にたどり着き、電車を乗り継いで家に帰りました。

<それから>
入校試験の結果は合格でした。よかった。そして、合格発表のその日(2/26)に、今の再就職先から「採用」の連絡をもらいました。会社にお世話になりますと伝え、急ぎ職業訓練校に連絡して事情を説明し、入校を辞退することを伝えました。訓練校の方から「おめでとうございます。よかったですね」と言ってもらえました。こうして、あわただしく年明けから「必要なだけ働く」を探した私の求職活動は終わりました。
この間、ハローワークや職業訓練校といった行政が用意した「セーフティーネット」の存在は正直、私には心強かったのです。見学会などのイベントもあって、不安を紛らわせてくれたことにも感謝しているのです。

次回の『中高年の早退』(第3回目)は、35年振りの「履歴書」と、生まれて初めての「職務経歴書」に関して書いてみます。今、ネットには膨大な量の転職ノウハウ情報が渦巻いています。中には「中高年から転職における履歴書の書き方」などというピンポイントで指南をしてくれるものまであるのです。きっと、企業の採用担当はうんざりしているのでしょうね。「みんな同じだよ」「こんなに立派な経歴の奴は普通転職なんてしないよ」とかね。だって、コピペで適当に編集をすればそれらしい履歴書ができてしまうのですから。「情けねぇなー」と今だから思いますが、当時はバカげた記事内容や、下らないノウハウまで信じてしまいそうになりましたよ。 よいシュウマイを、否、よい週末を。

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投稿者
おーちゃんパパ

おーちゃんパパ

2021年3月に35年勤めた会社を早期退職しました。カミさんと世界で一番可愛いメインクーンと暮らしています。

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