昔、「もうこれ以上は乗れないよ」なんて満員電車がホームにやってきて、それでも何人かが身をよじって乗車する。何とかドアが閉まり、そろりそろりと発車し、ひと揺れ、ふた揺れすると不思議なことに電車の中で乗客が「収まって」しまう。これを各駅で繰り返して、満員電車は無限に人を乗せて目的地を目指します。

時折、「これ、どうなっちゃうのかな」なんて状況を目の当たりにすることがあります。野球で言えば「ノーアウト満塁」、仕事で言えば「客が怒って、手が付けられない」、若いカップルが駅の構内でお互いに無口でずっと「固まっている」。それでも、結局は何とかなるのです。みんなが無傷という訳にはいかないでしょうけれど。

こういうヒリヒリした状況って、現役とオサラバした今となっては、自分が当事者になることは「ほぼ」起きません。そもそも「仕事を辞める」ということは、そういうことなのでしょう。収入も失いますが、代りにこういう胃が痛くなる様なこともなくなります。

私も何度も「もうだめだ」と思うことがありましたが、何とか「収まって」今に至っているのです。本当は「収まって」いなくて、誰かが後始末をしてくれたのかも知れません。こういうとき、会社ではよく「命まで取られることはない」って言いますけれど、あれ、本人が言っちゃダメですよね。うっかり言ったりすると「死ぬ気でヤレ」なんて叱咤されてしまいます。

それでは退職後の静かな暮らしにおいて、周囲がガタつくことがまったくないかと言えば、そうもいきません。親族の相続だの、隣家との土地境界線だの、植木の枝がはみ出しているだの、ゴミ出しがルール違反だの、何かと火の粉は降り掛かってくるのです。会社での出来事とちがって、直接に個人の利害にかかわることが多いので、単純ではあるものの「さっぱりとした解決」が難しいときもあるのです。「ポツンと一軒家」がうらやましいときもあるのです。


長らく空地であった我家の隣に、いよいよ建物ができるのです。今は密林の様に雑草が茂り、この撤去だけでも数日が掛かりそうです。また、その建物というのが単身者向けのアパートらしく、結構に近所の方々が戦々恐々としているのです。何だかいろいろと「ガタつき」そうです。何も面倒なことが起きません様に。起きたとしても、きっちりと「収まり」ます様に。

***
ブログランキングに参加しています。よろしければポチっとお願いします。やる気がでます。