日本企業のジョブ型雇用への移行が話題になっています。それでは、これまでの日本の雇用スタイルは何と呼ばれているでしょうか。メンバーシップ型でしょ? そんなのサルでも知ってますよ。もしかしたらカピバラだって知ってる。私は思うのです。これまでの日本の雇用スタイルは「奴隷労働型」であったと。

改めて「奴隷」の定義を確認します。
<奴隷>
所有の客体、〈物〉として扱われる人間で、社会的または法的にそのようなものとして正当化された身分の人間をいう。それは人間による人間の抑圧、したがってまた人間の隷属の最も粗野な形態であり、いっさいの差別の原型をなしている。なぜなら奴隷とは、人格を含めて身ぐるみ所有の対象、動産とされた人間であるからである。
※出典:株式会社平凡社 世界大百科事典 第2版

これ、何となく見慣れた風景じゃありません? そう、多くの場合、私たちは「通いの奴隷」をしてきた訳です。しかも、あまり違和感なく。指示する方も「相手を支配する」なんて考えず、指示される方も「これじゃ人格無視だよ」なんて憤りもせず。まるで当たり前の様に日本では「これが仕事」だったのです。そして、過去形ではなく今も「奴隷という仕事」がある様に思います。世界でも類を見ない「双方合意に基づく奴隷制度」です。

●その組織では会社ではなく上司が決めたルールが絶対で、そこには良し悪しは存在しない
●上司はどんなことでも部下にさせることができる、それがどんなヒドイ思いつきであっても
●何らかの「身分」が存在するかの様に、上司も部下もそれを当たり前に受け入れる
●「何か仕事ありませんか」などと部下から上司に奴隷仕事を求める
●奴隷は奴隷がキライ

仕事って、そんなものでしたっけ。会社、もしくは上司は従業員をまるで自分の「所有物」の様に何でもさせることができるの? 多少なりとも自分にアサインされた仕事以外の雑用をすることはあったとしても、そんなことが常態化し、大きな比重を占めるのならば、求人の職種に「雑用全般」とか書くべきじゃないの? だからみんな上司の様子ばかりを窺うか、イヤになって辞めてしまうか、病気になって動けなくなってしまう。

改めて考えるに「もっとみんなが幸せになる働き方」というのがある様に思うのです。このことはゴダイゴが1978年に「ガンダーラ」という曲の中で歌っています。まぁ、それがインドにあるかは分からないけれど。「ようつべ」とかで聴いてみてね、少し泣けるから。

そのための第一歩としての「仕事の定義=Job Description」や、これをベースとしたジョブ型雇用であるとすれば、そこに期待をしたいと思うのです。これなら採用後にミスマッチは減らすことができると期待するのです。けれど、経営者も従業員もすべてが「雇用とはきちんと定義された仕事を仲立ちとした契約」であることを理解しなければ、何も現場は変わりません。(経営サイドのジョブ型雇用導入の目的はまったく別のところ(コストカット、不要人材の整理)にあるものと思いますが)

「人件費なんて固定費なんだから遊ばしていても勿体ないじゃない」。いえいえ、そもそもその発想がおかしいのです。繰り返しになりますが、会社にいる時間のすべてを捧げて滅私奉公をするために働いている訳ではなく、従業員はアサインされた「仕事」をしているのです。仕事=奴隷ならば、そのとおりですけれど。

海外からの技能実習生の人たちから上がってくる「自分たちは奴隷ではない」という声に対して、マスコミは主に待遇面のヒドさやパワハラ、セクハラという切り口から問題をとらえます。けれど、私は受入側が当たり前のことの様に思っている「奴隷労働」への抗議がそこにある様に思うのです。日本に「技能を修得しに来た」のに、まるで雑用係の様に扱われる、そんなバカな話はありません。そう、奴隷ではないのですから。

「奴隷」を受け入れることができるのは「奴隷」の先にある自分の未来を信じられる若者と、「奴隷」以外には何も選択肢がないと諦めた老人だけだと私は思うのです。

中高年はこれまで、多少年を喰っていても前者の思いで懸命に「奴隷」に励んできた訳ですが、会社に残って雇用延長されるにせよ、退職して再就職をするにせよ、そのタイミングで初めて自分が「行き止まりとしての奴隷」であることに直面します。受け入れるもよし、「きちんと切り出されたあなたの仕事」を求めて次の場所に向かうもよしです。よく、求人サイトに「ひとりでコツコツできる仕事です」なんて紹介が出ていますが、これ、奴隷疲れした人にとっては燦然と輝くコピーだと思います。いいなぁ、それ。

そんなこと、つべこべ言ってないで、金貰ってんだから働けよ、という声が聞こえてきそうです。こちらも「貴重な時間と労働を提供してしてやってんだから」って言い返したくなります。それに「『奴隷』なんて仕事をする契約はしてないぞ」ってね。みんな、タフな振りをする人は好きですよね「金貰ってんだから」ってセリフ。

難しい仕事でも、キツイ仕事でも何とかする(根拠のない)自信が私にはありますが、「奴隷という仕事」だけはお断りです。だって、つまらないんだもの。

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