「お前さぁ、最近、若い連中にいろいろとキツくあたっているんだって?みんな言ってるよ、気を付けろよ」 みんな言ってるよは「あなた」が思っていること。しかも親切心から言っているのではなく、相手に嫌味を言って、気分を悪くさせたいだけ。質の悪い人です。
こういう「捏造された噂話」だけでなく、世界は「誰かに聞いた話」で溢れています。知らぬは噂話の当事者だけで、周囲のみんなが知っているなんてこともざらです。特に会社であれば、「人事」「退職」なんて話題はみんなの大好物です。
「オレ、会社辞めようと思うんだ」なんて上司以外の誰かに初めて話したにも関わらず、「そうなんだってね、聞いてるよ」とか言われると、とてもいや~な気分になります。そうか、最近妙にみんな優しくしてくれるのは「そのせい」だったのか。思わず、辞めるのを止めてしまうところでした。
「噂」のメカニズムは一方的に「悪口」方面に成長していくものだそうです。確かに「よい噂」なんてものは聞いたことはありません。「鈴木課長、ボランティア活動のため、来週は1週間休みなんだって」「へぇ~」 ほら、つまらないでしょ。それが、「鈴木課長、奥さんと上手く行ってなくて、来週、いろいろと手続きのために何日か休むらしいよ」「そうなの!そう言えば、先週の木曜日もオフィスで自分持ちのスマホで何だか怒鳴ってたしね」「えっ、何何、それ、教えて」 ほら、続きを聞きたいでしょ。
「噂」とは少し性格が違う様に思いますが、今は「口コミ」というものがあります。こちらは、発生してからあっという間に本人の知るところとなります。(閉じた社会での)「噂」のもつ「ある一定の人たちだけの内緒の話」という側面が、ネットの「口コミ」からはざくっと切り落とされているので、「噂」のもつ「密やかな楽しみ」はそこにはなく「炎上していく」「だれかが困ることになる」のを眺めるという非常にイジワルで不寛容な感情がそこには渦巻いています。
まぁ、「口コミ」から火が点いたヒット商品なんてものもあるので、何とかとハサミは使いようなのでしょうね。「口コミ」も量から質の時代に移ったそうで、難しいなぁ。確かに、昔はAmazonの商品レビュとかを読んで購入を決めていましたが、今じゃ「これ、ほとんどヤラセでしょ。評価が良いのも、悪いのも」って疑ってますもの。
さて、「噂」「悪口」に関する幾つか「みんなの言ってること」を眺めましょう。
<人間関係の何にストレスを感じるのか>
1位 噂話・陰口(33%)、2位 コミュニケーションのミスマッチ(26%)、3位 仲間意識の低さ(13%)
※出典:日本法規情報 「職場でのストレスについての実態調査」(2018.2)
「噂」、随分と悪い奴ですね。こんなにも日本のサラリーマンを傷付けて。私はてっきり「無視」「仲間外れ」が1位だと思っていました。まだ、噂になっていたり、悪口を言われている中はよくて、「無視」は1位の上の「殿堂入り」なのかも知れません。
<噂好きの人の特徴>
♪どこに行っても群れる人 ♪気が強くて負けず嫌いな人 ♪社交的で付き合い上手な人 ♪自分のことは話さない人 ♪自己肯定感が低い人
※出典:マイナビウーマン 「噂好きの人の特徴」(2021.10)
ふむふむ、これを読む限りでは「噂話」というのは「仲間の連帯感」を保つための重要なツールだということが分かります。そう、「仲間」の重要な構成要素には「仲間しか知らない秘密」があるからです。勿論、仲間を維持するために、噂話ばかりをしている訳もないのですが、自分が傷づかず、踏み込まれず、そこそこに居場所を確保するために「噂話」というのは非常に都合がよいのです。
「仲間」の中には、何故かそういう話を拾ってくる妙な才能がある人がいて、「いやだぁ、ハハハ」とか言いながら、結構に「噂話を楽しむ人」がいます。何となく幸せな構図。
されど、「仲間」以外にとっては「あの人たち、きっと私の悪口を言っているんだ」って見えてしまうかも知れません。まぁ、どうにもならない問題です。唯一の解決方法は「思い切って仲間に入っちゃう」ですかね。悪の軍団だと思っていたショッカーも、入ってしまえば仲間同士結構に楽しいみたいな感じ。
「噂の男」って邦題がついた曲があります。昔々「真夜中のカウボーイ」って映画があって、その主題歌だったのです。原題は「Everybody’s Talkin’」ですから、「みんな(オレのことを)喋ってる」、洒落た邦題です。まぁ、超訳すると「誰が何て言ってもいんだよ、オレはオレ」という歌詞が、軽やかで何となくとぼけた感じの曲に乗せられています。ようつべのリンクを下に貼っておきました。
「真夜中のカウボーイ」って、中学生のころに名画座に友達数人と見に行ったのですが、その世界観が、明らかに子供が理解できる範疇を大きく超えていて、何も覚えていないことを覚えています。今と違い「作品に関する口コミ」なんてものもなく、カッコいいタイトルに惹かれて観に行ったのです。
あの日の私にスマホを渡して、作品の評価ページを見せ、「キミにはまだムリ」と教えてあげたいです。あの頃は友達と一緒につるんでいるだけで楽しかったので、まぁ、いいや。