マックス・リヒターはポストクラシカルの代表的な作曲家です。これは誰? それは何?。このエントリを書いている私が「マックス・リヒター」に辿り着いたのは僅か1ケ月程前のことなのです。巷間では既に有名だった様子で、こんな素晴らしい音楽家のことを知らなかったとは、自分のアンテナ感度の悪さにあきれる次第です。
マックス・リヒターは1966年にドイツで生まれた作曲家/ピアニストです。様々な映画に楽曲を提供したり、サウンドトラックを担当したりしています。また、いくつもの実験的な試みをクラッシック音楽側から行っており、ヴィヴァルディの『四季』を下敷きにして新たにミニマル音楽としたものや、8時間を超える眠りのための大作(sleep)を発表しています。
ポストクラシカルというのは定義がまだ確立していない音楽のカテゴリですが、私なりに特徴をまとめてみると、↓この様に考えています。
①わかりやすく、センチメンタルで内省的なメロディである
②クラシカルな楽器の演奏(ピアノ、弦)に電子音やSEが効果的に散りばめられる
③スローテンポである
④現代音楽の「ミニマル」の様にフレーズが繰り返し反復される
⑤音数や楽器の数が少なく、余韻というか隙間が多い
勿論、楽曲により違いはありますが、概ね、この様な印象です。シンプルに言ってしまえば、主張をせずに淡々と流れる音楽という感じでしょうか。何か作業をしながら、何となく流しておくには最適です。昔からあった「環境音楽」的なアプローチや、美しいメロディを分かりやすく短い楽曲に詰め込んだ「ニューエイジ」的なアプローチを経て、これらの音楽が目指した地点に向けて、大きく進化した音楽がポストクラシカルと言えるかもしれません。
マックス・リヒターと共にこのカテゴリの代表的な作曲家/演奏家としてヨハン・ヨハンソンが知られています。アイスランドで1969年に生まれた彼は、残念ながら2018年に僅か48歳で亡くなってしまいました。彼の代表作であり、最後の作品となった「Orphée」もまた、私がこの1ケ月の間に「辿り着いた」名盤です。
最近は映画音楽としてポストクラシカル的な曲やアプローチが用いられることが多いように思います。
「Blade Runner 2049」(2017)では当初ヨハン・ヨハンソンが音楽を担当していましたが、制作過程で映画音楽界の巨匠であるハンス・ジマーに交替することになりました。現場で何が起きていたのかは分かりませんが、ハンス・ジマーが「ポストクラシカル的な手法」で制作した楽曲は、この映画の世界観を見事に支え、映像に深みを加えています。この映画の前作でもあり、SF映画の絶対的な金字塔である「Blade Runner」(1982)の音楽でヴァンゲリスが果たした役割を十分に果たしています。ちなみに、前作は「雨の降る混沌とした夜の映像」が印象的でしたが、続編では「雪の降る殺風景な午後の映像」が強く印象に残ります。どちらもよい映画、よい音楽でした。
長いエントリーになりますので、「マックス・リヒター」に関する私の思いや感想は「その2」とします。