不寛容な世の中です。うっかり話したことの言葉尻を捉えられて、あちらこちらで「炎上」です。多様性の重要性を説きながら、多様な考え方を開陳することが憚られるという何とも奇妙なことになっています。次の生贄を探して、得体の知れないものが世界をうろついているかの様です。

何を考えたっていいんです。考えていけないことなんか何一つない。ポイントは「口に出さなければいい」訳です。けれど、頭と口は繋がっているので、つい心で思っていること、即ち「本音」がポロリと口からこぼれてしまいます。どうしてあのとき、あんなことを言ったんだろう…誰にでもそんな後悔があるハズです。私なんぞ、そんな「気まずい発言」が一体幾つあったやら。まだまだ更新中だけどね。

「言葉に気を付ける」ことを時間を掛けて、みんな徐々に学んでいきます。「余計なことを喋らない」、そして「建前を話す」ことを覚えていきます。社会に出れば、ずっと黙っているということは許されず、「何か喋る」ことが求められるのです。その都度「本音」ばかりを話していては切り傷が絶えません。

「面白くない奴だな」とか、「今日は本音で話そうぜ」などと言われても、穏やかに笑いながら「そうですね」とか言ってやり過ごせばいいんです。それが自分にとって大切な場だって思っていないから、「適当なこと」を話して、お茶を濁すことにしたのですから。それに、その段階で言うことを変えたら「あいつは普段、キレイごとを言うやつだよ」なんてもっとヒドイ評価を貰ってしまいます。堂々と建前を話す、とてもよい感じです。

「本音」と「建前」が最も入り乱れ、交錯する場、それは「転職」です。転職元にも、転職先にも、場合によっては自分に対してさえも「本音」と「建前」を使い分けるという非常に「しんどい」経験を転職希望者はすることになります。だから、そんなに何回も転職をしようと思わないのかも知れません。まぁ、世の中には何回、何十回も転職を繰り返す「転職マニア」「転職のプロ」みたいな人もいますけどね。

転職理由の「本音」と「建前」に関する興味深いアンケートを見つけました。
※出典:エン・ジャパン 転職コンサルタント100人に聞いた!転職理由の「本音」と「建前」(2019.2)
転職者本人が回答したものではなく、「転職コンサルタント」がこれまで相談に乗ってきた転職希望者の思いを回答したものとなっています。

<転職者が企業に伝える転職理由と本当の転職理由が異なるケースはありますか?>
5割以上異なる(50%)/3割~5割未満程度で異なる(16%)/3割~5割未満程度で異なる(25%)/異なるのは1割未満(9%)

みんな「キレイに辞めたい」訳ですよ。これって、転職者本人もそうだし、転出元にしたって、このご時世なので、「何か問題があって辞めるんじゃないよね」などと心配なのです。そして転出先企業にしても「前職での面倒な話」なんて聞きたくはないのです。こんな事情を背景にして転職コンサルタントとしては「本音はどうでも、転職先の企業にはポジティブなメッセージを伝えましょう」なんて言って、転職者と共に「相当にキレイに転職理由を盛る、脚色する」んでしょうね。みんな合意?の上とはいえ、変なの。

<転職理由の「建前」と「本音」>
♪建前:「仕事の領域を広げたい」(68%)、「専門スキルや知識を発揮したい」(59%)、「会社の将来に不安を感じる」(28%)
♪本音:「報酬をあげたい」(57%)、「職場の人間関係が合わない」、「評価に納得できない」、「上司と合わない」(いずれも48%)

まぁ、「本音」に関しては、転職元/転職先の双方に対して、ずっと語ることなく「墓場まで持っていく」というのが、正しい「転職者のあり方、佇まい」の様に思います。今更「本音」を話したところで、「そんなことは知っていたよ」といった気持ちの悪い空気が流れるだけです。普通、居心地のよいところを人は動きたいとは思いませんよ。

それにしても「建前」の第3位になっている「会社の将来に不安を感じる」って、’ずいぶんな’転職理由じゃありません? もし、私がこんなこと言われたら「そうですね、けれど、あなたが辞めてくれるので問題はなくなりました」って言ってしまいそうです。これ、「ケンカする」ことを狙ったものなのかな?

中高年だからこそ忌憚なく「本音」を語るのか、中高年だからこそ節度をわきまえて「建前」を重視するのか。好きにして下さいな。まぁ、適度に使い分けて、上手に生きていくのが「立派なオヤジ、オバサン」かと。

***
ブログランキングに参加しています。よろしければポチっとお願いします。やる気がでます。