人生で一番最初に労働による対価を得たのは大きなパブのウエイターでした。大学の先輩に誘われてというか、強引に押し込まれて週に2日程働いたのです。大手の酒メーカー直営のチェーンの一つで怪しいところはまったくありませんでしたが、よく店長に怒られました。「お前、何、不貞腐れて仕事してんだよ」と怒鳴られても、本人は一所懸命やっているので、それ以上どうしようもできません。まぁ、修行をしていた訳でもないので、程なく辞めてしまいましたがね。店のまかないで出してくれるカレーライスがとてつもなく美味しかったことを覚えています。インド人もびっくりです。
このバイトを始まりとして、卒業して就職するまでの間、いろんなバイトをし、その合間に大学に通っていた様なものです。確か、入社式の数日前までバイトをしていた様に思います。バイトが好きだったのか、いいえ、お金が好きだったのです。
さて、私はその後、新卒で入った会社に思いも寄らず長くお世話になり、昨年の3月に会社を中退(早期退職)し、別の会社に再就職をして現在に至っています。この後も、自分がよかれと思う生き方、働き方に準じて転職することもあるでしょう。
そんなこんなをしている中に70歳を超えてしまうと、多くの場合、「社員」という肩書を失って、「バイト」として働くことになります。まぁ、もっと前のタイミングで「仕事を打ち止める」場合は別ですが、70歳を超えても働きたいという人は、恐らく、人生における仕事の打ち止めは「バイト」ということになるのです。仕事というのは「両端をバイトに挟まれたハンバーガー」みたいなものだったのです。挟まれているものは人それぞれだけどね。ダブルチーズなのか、ベーコンエッグなのか、てりやきなのか…
さて、私も70歳以降も働くことが必要な場合、最後は「バイトくん」で仕事をすることを考えています。簡単にそのシミュレーションをしてみます。
私は「危険物取扱者(乙種4類)」(略して乙4)の資格を持っています。れっきとした国家資格ですが、普通に1ヶ月くらい1冊の参考書を眺めていれば合格できる難易度のものです。私は早期退職する前の年の秋に、具体的な必要性などまったくないままに受験し、合格したのです。
で、この資格があると何ができるかと言うと、ガソリン(危険物)を扱うためには、この資格を持つ者がガソリンスタンドにおいて立ち会う必要があるのです。つまり、乙4保有者がいなければ、ガソリンスタンドで給油の営業ができないのです。特に夜間勤務においては、少人数で業務を回す必要があり、中でもセルフ型の24時間営業の店舗においては、「乙四」保持者が不足することになるのです。それ故に、いつも「乙四資格保有者」の募集求人が絶え間なく出されているのです。
そんなに難しくない資格なら沢山保持する人がいて「人手不足」など起きないじゃん!と思う方もいるかと思います。そうなんですけど、バリバリと働く現役の人たちは、この資格を使って「オールタイムの仕事」をしているので、「セルフ型スタンドのアルバイト」をすることはできないのです。意外なところで「人手不足」が起きているのです。
さて、「乙四、セルフ、バイト、70歳」なんてキーワードでGoogleに訊ねてみると、もうお腹いっぱいに求人案内ページが出力されます。
その中から一つを選んで条件を拾ってみます。
●時給:1,050円 ※22時以降 深夜時間帯割増し 1,313円 ●勤務時間・曜日:① 8:00~19:45
②19:00~24:00 ④22:45~9:00 ※週2~3日
ということは、夜勤は遠慮するとして、②の勤務時間で週3日働くとすれば、一ヶ月に1,050円×5h×3日×4週=63,000円(額面)の収入が得られることになります。もっと稼ぎたければ、労働時間を増やす(7h)、働く日を増やす(4日)といった対応をすれば、12万円程度(額面)にはなるのです。70歳を超えても、何となく「働ける」感じがして、うれしくなります。まぁ、実施にどれだけ大変なのかは分かりませんが、求人広告には「基本的に冷暖房完備の室内での監視業務、接客や給油業務、販売業務、作業等は無し」と書かれています。信じることにします。
これから十数年後、セルフ型のガソリンスタンドで私を見かけても、妙なクレームは付けないで下さいね。まぁ、その頃は耳が遠くなっていてクレームの半分も聞こえないかもしれませんけれど。「ねぇ、聞こえてんの?バイトの爺さん!!」