11月には父母の命日があります。月初と月末なので、中間となる11月の中旬に毎年、墓参りに行きます。それぞれの命日にいくべきではありますが、墓が自宅から少々離れたところにあることから、親不孝な子供を許してもらっています。
今年も昨日(11/14)、行ってきました。今年は私ひとりでの墓参りです。昼ごはんを食べてからゆっくりと家を出発したので、墓のある霊園についたころには少し日も傾いていました。管理事務所に立ち寄り、墓に手向ける花と線香を買い、父母の墓に向かいます。管理事務所から墓までは結構な勾配の坂道を200メートル程登っていきます。
初めてここを歩いたのは今から33年程前の夏の日でした。当時、体調を悪くしていた母がどうしても新しく墓を建てたいと父に相談し、この霊園の販売会に来たのです。私は当時独身で父母と共に暮らしていましたので、父母を車に乗せて、同行したのです。母は父側の親戚と折り合いが悪く、昔から苦しんでいました。前年に脳溢血で倒れ療養中だった母は、自らの寿命が長くは残されていないと考えたのでしょう。死後に家族から離れ、遠隔地にある父側の墓に一人で入ることをよしとしなかったのです。暑い暑い夏の日でした。墓を建てる予定の場所に立ち、母はずっと、そこからの景色を眺めていました。
そして、秋には誰の名前も墓誌に刻まれていない墓が建ち、母はそれを確かめ、安心したかの様に11月の末にこの世から去っていきました。61歳でした。あと数年で、私もその歳を迎えます。思えば、本当に短い母の人生でした。そして、子供として、私は何も母にしてあげることができませんでした。いつも機嫌が悪く、思いやりもなく、自分勝手なだけの子供だったのです。
父は母に先立たれた後、それから約20年間、毎月、月命日になると母一人が眠る墓を訪ねていました。年老いてからも、管理事務所から墓までの坂道をゆっくりと登って母に会いに行ったのです。そんな父も亡くなってから既に久しく月日が過ぎました。
墓を掃除し、花を供え、墓石に水をかけ、線香に火をつけます。少し服を整え、姿勢をよくして、墓に手を合わせます。 産み育ててくれたことを感謝し 、ひどい子供であったことを詫び、あの世があるならば、そこで父母が苦しみなく過ごしていることを祈ります。
そして、いつもの様に「また来るからね」と言って、今度は私は坂を下っていきました。
穏やかな秋の一日でしたが、家に着く頃にはあたりも暗く、また、肌寒く感じられ、冬が近いことが分かりました。