このエントリは猫の腎臓の話です。興味がないな、などと言わずに是非、読んでみて下さい。私にとって、とても大切な話なのです。
<猫の腎臓に関する基礎知識>
日本ペットフード協会の2021年の調査によると猫の平均寿命は15.66歳で、これは2010年の調査に比べ1.3歳伸びています。これには、家飼いが普通になったこと、栄養(ごはん)が飛躍的に改善されたこと、十分な治療や予防が施せるようになったことなどの理由が考えられています。しかし、長命化の一方で、猫は「腎臓病」という爆弾を抱えているのです。ほとんどの猫は高齢(7歳頃から)になると腎臓病を発症し、腎臓の機能は一度失われると回復しません。12歳以上の猫の死因トップは泌尿器疾患(腎臓病など)で約30%にも上ります。そして、これまで「猫の腎臓病」というのは、誰もそれ以上に踏み込むことなく、まるで罹患することが宿命であり、不治の病のように扱われてきたのです。
<AIMの発見/猫の腎臓病治療への希望の光>
東京大学大学院医学系研究科疾患生命工学センターの宮崎徹教授は人間の血液中に高い濃度で含まれているタンパク質を発見し、「AIM」と名付けました。AIMは腎臓で行われている血液の中の老廃物をろ過して尿として体外に流す作業において、ゴミ掃除を行うもので、人や犬にはありますが、猫にはこれが無かったのです。(正しくは「機能していない」) つまり、猫は腎臓に徐々にゴミが詰まり、やがて腎臓が壊れてしまう生き物なのです。この発見に基づき、実際に猫にAIMを注入する実験を行ったところ、腎臓病の進行を止めることができる効果が認められました。猫の寿命が30歳まで伸びることが期待できる様になったのです。猫の腎臓病治療に「希望の光」が見え始めたのです。
<資金不足による研究ストップ/多くの寄付による研究の再開>
この研究を進めるべくベンチャーも設立され、治験薬を作り国から薬としての承認を受ける治験を行うめどが立つところまでは至りましたが、コロナ禍により資金不足となりプロジェクトが中断してしまったのです。ところが、この研究のこと/プロジェクト中断のことが2021年7月11日にネット上で記事配信がされるや否や、研究を再開させるべく寄付の輪が信じられないスピードで広がっていきます。僅か5日間で7,400万円の寄付が集まり、現時点で2億円を超えた寄付が集まっています。演歌歌手の藤あや子さんら猫を愛する著名人からも寄付/支援の声が相次ぎました。また、宮崎先生による寄付御礼のプレス発表が7/16にされると、加藤官房長官(当時)の定例記者会見でも取り上げられることになりました。
生き物は病気を隠すと言います。言葉がなく何も語ってくれないだけでなく、健気に「元気なフリ」をするのです。よく「家の猫が突然に死んでしまった」という話を聞きますが、本当はもっと早いタイミングで病気や体の不調に気付いてあげられたのかも知れません。時折、我家のおーちゃん(メインクーン)に「どこか具合悪いところがあるかい?」と尋ねるのですが、「大丈夫ですよ」とばかりに尻尾を軽く振るだけです。
寄付と共に製薬会社がスポンサーとして加わり、研究が再開されました。今後順調に研究/開発が進めば2年後(2023年)には治療法(薬)が実用化されると言います。我家のおーちゃんが腎臓病に苦しむことがあった場合に、十分に間に合うことが期待できます。ただ、この治療法(薬)は「若い頃からの投与」が必要とされているので、その点が気掛かりです。犬や猫の1年は人間の7年に相当すると言われてきました。所謂、dog yearです。今は彼ら/彼女らの寿命が延びたので、「人間の6年」程度が適当なのかと思います。それにしても、今月末におーちゃんは36歳(6歳)になります。まだ子猫の様に思ってきましたが、既に中年猫なのです。
今、私にできることはこの研究を応援し、おーちゃんと未来のおーちゃんたちが少しでも長く家族と共に暮らせる様に研究が順調に進むことを祈ることだけです。弛まぬ努力を続けられている宮崎先生、研究スタッフの皆さんに感謝です。
♪多くのメディアで取り上げられていますが、次の記事のリンクを置きます。
・「ネコの宿命」腎臓病の治療法を開発 寿命が2倍、最長30年にも 東大大学院・宮崎徹教授インタビュー(2021年7月11日) ※この記事から大きな支援の波が生まれます
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070800906&g=soc
・東大の担当者もびっくり、猫の治療薬開発に寄付殺到…総額1億2千万円突破(2021年7月20日)
https://www.yomiuri.co.jp/science/20210720-OYT1T50077/
♪東京大学の寄付受付サイトのリンクを置きます。(宮崎徹教授の猫の腎臓病治療薬研究)
https://payment.utf.u-tokyo.ac.jp/tokyo/entry.php?purposeCode=100&supportCode=238
※僅かながら、私も寄付をしました
♪猫が30歳まで生きる日(宮崎徹先生)