ここしばらくで最大に盛り上がったバズワード、それは「DX経営」であった(既に過去形)と私は思うのです。新年度に発表する経営計画、ましてや中期経営計画(3年)といったものに「DX経営」という言葉をうっかり折り込んでしまうと、しばらくして計画を総括する際に、計画を形にした経営企画部のスタッフ達ですら、「DXって何だっけ?」ということにもなりかねません。何かのCMで流れていた様に「デラックスのことだよね」などと言ってしまうかもしれません。
忘れない中に書いておきます。DXとは、「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」、即ちデジタル技術を使った社会変革/企業変革といった言葉です。私は数年前にこの言葉とこれが何を意味するのかを耳にして以来、「これまで企業や団体が地道にやってきたIT導入、IT活用による業務改善、効率改善、サービス運営/運用とどう違うのか」がしっくりこないのです。『ITを導入するだけではなく、データを整備したり、関連するサービスも作り出し、社会変革を生み出す』などと言われても、普通にそういうことを「現場」はやってきたものと思っているのです。きっと、私の様な人間を納得させるために、頭のよい人たちが美麗なPowerPoint資料を全世界で何億枚も用意しているに違いありません。否、きっと最近はyoutube動画を用意しているに違いありません。
バズワード(Buzzword)という言葉というか概念があります。先ず、wikipediaの定義を引用し、共有します。
バズワード(英: buzzword)とは、技術的な専門用語から引用したり、それを真似た言葉で、しばしば、素人がその分野に精通しているように見せるために乱用される、無意味だが、かっこいい、それっぽい言葉のことである。 また、特定の期間や分野の中でとても人気となった言葉という意味もある。権威付けされたり、専門用語や印象付けるような技術用語。コンピュータの分野でよく使われるが、政治など広い分野で使われる。1940年代半ばのアメリカのスラングが起源。
『ウィキペディア フリー百科事典日本語版』(https://ja.wikipedia.org/)
最終更新日時:2021年8月27日 00:35
アクセス日時:2022年1月16日 19:30(日本時間)
マーカーを引いた部分、結構辛辣ながら、本質を見事についています。思わず、クスっとしてしまいます。何がバズワードなのか、だれがその言葉をバズワードと決めるのかといった明確な「決め」は存在しません。しかしながら、判定の目安はあります。コンサル業界とIT業界が、その言葉を冠したセミナーを盛んにやり始めたら、ほぼ、それはバズワードであると認定することができます。バズワードは「神輿」みたいなものなので、一時はみんなで担ぎますが、しばらくして祭りが終わると、ほぼ同時に誰もが使わくなります。それどころか、呪いの呪文の様に以降も誰の口にもされることはありません。有名どころだけでも、古くはユビキタス、BPR、ちょっと前だとWEB2.0、インダストリー4.0など幾らでもバズワードを書き出すことができます。(特に大声を出して神輿を担いでいた人たちは、このことを「黒歴史」でもあるかの様にすっかり忘れてしまうのです、すごい能力です)
勿論ながら、これらの言葉は「その時代に漂っていた空気感を総称したもの」として、どこかの誰かの何かに役に立ったものと思います。しかし、雰囲気だけで、明確な定義や具体性もなく、確立された評価方法も指標もありません。(あったらゴメンなさい) また、自由自在に解釈ができ、ここから新しい派生概念を宣言することも思うがままです。 そして、メディアや団体による、かつてのこれらの言葉の「取り上げ方と持ち上げ方」は、今の「DX経営」のそれとよく似ています。
まぁ、バズワードは忌嫌われるものではなく、「たまに出るんだよね、そういうの」という妙な市民権を得ています。「神輿なんだから、どうせなら皆で楽しく担ごうぜ!」という感じです。特にそれがあっても困らないし。乗り遅れたみたいに見えるとカッコ悪いし。お腹がすくものでもないし。
どの業界であっても現場には、その現場の専門家にしか知りえない知識や、体得できない技術、最適に業務をこなすプロセスがあります。早期退職をして未経験の仕事に就き、改めてそのことを再認識させられました。新しい仕事を始めて10ケ月が経過しても、まだまだ知らないことがたくさんあるのです。
当たり前のことですが、変革とは常に「現場」で生まれ、育つものの様に思うのです。
きっちり「DX経営の本質を理解してモノを言え」と言われそうですが、それは1年後にこの言葉が生き残っているかどうかのお楽しみということで。