メインクーンのおーちゃんは猫草が大好きなので、我が家では新鮮な猫草を年中欠かすことなく育てています。直径15cm程度の底の浅いプラ鉢にぎっしりと種を敷き詰め、軽く土をかぶせます。表面が乾かない様に水をやります。すると夏だと3日、冬でも5日程度で小さな芽が続々と生えてきます。そして、発芽から4日程で、「新鮮な猫草」をおーちゃんに献上するのです。花屋さんでも店先にいくつか置いてあり、大体200円の値札がついている「あれ」です。毎度これを購入する訳にもいかないので、私はせっせと猫草栽培に取り組んでいるという次第です。
おーちゃんは丈5cm程度のまだ若い芽に、霧吹きでたっぷりと水を吹き掛けたものを「はむ」(はみはみする)のが大好きです。なかなかに通な食べ方です。 猫草とはイネ科の麦のことだそうで大麦だったり燕麦だったりします。 おーちゃんにあげたものが十分に育ってしまったり、葉に元気がなくなると庭の片隅に放り投げておくのですが、そこから元気を取り戻すものもあり、麦が実ってしまい、穂が風に揺らいでいることも度々です。
なぜ、猫が猫草を食べる(はみはみする)のかは、実際のところ「分かっていない」のだそうです。猫草の葉にある細かい毛が腸を刺激し、飲み込んだ毛を吐き出させているのではないか、腸内のバランスを整えるのではないかといった説があるそうです。ただ、うちのおーちゃんは葉を食べるのではなく、葉についた水を、舌でペロペロとなめているときも多いので、あまり、実利的な目的から猫草を好んでいる訳ではなさそうです。遊びの一種と考えているのかもしれません。
猫は肉食なので、猫草を例外として、野菜や穀物は口にしないのですが、ニンジンやセロリの臭いが好きな様子です。私が野菜ジュースを飲んでいると「少し分けて下さいよ」とばかりに近寄ってきては、テーブルの上までジャンプをします。これらの野菜の臭いは「またたび」に似ているとも言われているので、どうにもその匂いに抗い難いのかもしれません。
猫は犬に比べて、聴覚で勝り、暗いところでも自由に動ける視覚で勝り、嗅覚では犬の方が優れているそうです。とはいっても、猫の嗅覚は人間の数万から数十万倍!も優れているらしいので、いろいろと臭いにはうるさい様子です。 以前、戯れに夕食のマグロのさしみを一切れ、おーちゃんに献上したのですが、近付いて臭いを嗅いだ後、まるで、 「これ、ダメなお魚ですよ、腐っていますよ」とばかりに口にしませんでした。そんな鮮度の刺身を私は美味しい!と言って食べていたのかと思うと、自分の鼻と舌の鈍感さに少し凹みました。
きっと猫も犬も私たちとは違った認知の世界に生きているのでしょう。それはとても想像のつかない世界です。 逆に彼らからすると「見たいものだけを見て、聞きたいものだけが聞こえ、知覚情報を自分の都合に合わせて解釈する」人間のことを何と変わった生き物だろうと思っているのかもしれません。 ちなみに優れた聴覚を持つ猫ですが、眠たくなると、こちらがテレビを付けていても、まったくお構い無しに眠ってしまいます。聞きたくないものは聞こえないという点では人間と同じなのかもしれませんね。