仕事にせよ何にせよ、一つの場所で長い間活動をしていると「小さな世界」が自分のすべての様に思えてきます。だからここでイヤなことがあると生活のすべてが「どんより」としてしまいます。そして、そこで「ピンチ」に陥る、「ピンチ」を迎えそうになる、そんなときに気分転換をする魔法の言葉が「命まで取られることはない」です。誰だって何度も聞いたことがあるでしょ。「命まで取られることはない」、けれど、結構いろんなものを失うときはあるけどね。
「命まで取られることはない」というのは「開き直る」ことですが、開き直る、開き直りについて、言葉の意味を確認します。
【開き直り】これまで内向的な態度であったものが、居直ってふてぶてしい態度に様変わりするさま。開き直るさま。 ※引用:実用日本語表現辞典
そうそう、開き直るというのは「守勢から攻撃に転じる」ということでもあります。しかも「別に失敗してもいいんだよ」などという少々破れかぶれ的な空気が流れます。しょっちゅう「開き直る」のはどうかと思いますが、行き詰った局面においては「これが一番大事」です。
おそらく退職後の「雇用延長」でも「再就職」であっても、もはや「命まで取られることはない」なんて思いにさせられることは新しい職場では起きないことでしょう。それに、そもそも定年なりで退職した後に再度働くということ自体が「開き直っている」みたいなものです。ちっとやそっとのことではあまり「くよくよ」しないのです。もしかすると打たれ過ぎて、パンチドランカーになっているのかも知れませんけれど。
されど中高年にも「開き直り」が必要なピンチはやってきます。思いつくものを幾つか並べてみます。
<リストラ>
法改正(2021年4月1日施行)により、65歳までの雇用確保が義務、そして65歳から70歳までの就業機会の確保が努力義務が企業に課された訳ですが、逆に早期での退職勧奨が増えるのではと言われています。よく「残るも地獄、辞めるも地獄」などと言われますが、ピンチではあっても、「命までは取られることはない」。50代も後半から未経験の仕事を始めた私が言うのです。安心して下さい。
<老後の資金繰り>
やはり老後の最大のピンチと言えば「お金」です。50代の男女1,000名に定年退職後に金銭面に不安があるかを聞いたところ、「とても不安に感じる(40.4%)」、「どちらかというと不安を感じる(45.4%)」と合わせて85.8%が不安を感じているのが実態だそうです。 ※出典:マイスター60 人生100年時代に関するアンケート(2019.6)
「心配」はしても、どうにもならないんですよね、中高年からじゃ。心配が現実に変わってしまったときに、開き直るって相当に辛い感じがします。最後のセーフティネットは生活保護ってことですよね… でも「命まで取られることはない」。
<自分や家族の健康問題/認知症問題>
仕事よりもお金よりも本当は「健康」「認知症」に係ることが「ピンチ」なのかも知れません。朝日新聞Reライフnetの読者アンケートによれば、「自分が病気になること」(76%)、「介護が必要になること」(73%)、「認知症を患うこと」(68%)の順で、健康面への不安が上位にあがっています。 ※出典:朝日新聞Reライフnet 「老後の備え」に関するアンケート(2021.5)
これ、アンケート回答でも「お金問題」よりも上位に来ているんですよね。こればかりは、「命を失う」ことにもなりかねません。健康に十分にケアをする、けれどお金はそんなに掛けられない。或る意味で開き直って日本式の「質素な暮らし」を心掛けるのがベストかも知れません。魚だよ、魚。
現役時代の胃が痛くなる様な「切羽詰まった」感じが懐かしいと言えば、正直、もうコリゴリです。これからの時間、開き直らなければならない様なピンチが来ないことを祈るばかりです。もはやピンチをはね返す気力もなく「命まで取られること」があるかも知れませんしね。