「お金さえ払えば何でも思うとおりになる」という人がいて、というか、殆どの人がこの考えに頭をやられていて、これが満たされないと大暴れです。特に仕事を離れて、「個人」に切り出されてしまうとモンスターです。

他人のことはエラそうに言えません。私もれっきとしたモンスターで、思い返しても何度もヒドイことをして、誰かをその牙の犠牲にしてきたのです。宅配の品物が届かない、誤配送されたといってはコールセンターにクレームの電話をし、家の工事日程に遅れが出たといっては「困ります」と強硬に仕事を急がせる、本当に数限りなくヤラかしてきました。

「お客さまは神様です」なんて変なコピーが金科玉条として、私たちの中に刷り込まれたのはいつからでしょうか。結局、これって「提供する者」と「提供される者」の関係を絶望的に悪化させている様に思うのです。

モノにしろ、サービスにしろ、「買う」「契約する」という行為は単に「提供物とお金との交換」というだけで、そこに「怒り」やら「相手を服従させる」なんてものがあってはいけないのです。

確かに「交換」が上手くいかないときもあるに違いありません。「期待どおりではなかった」「提供されない」「提供されたものに瑕疵があった」… けれど、こんなときに相対するものに「怒る」、「ひどい言葉を浴びせる」、これは何とも困った話です。

極めつけが「こっちは金を払っているんだよ」というセリフです。金を払っている内訳には、相対するものの人格を傷付ける様な権利まで含んでいるとでも思っているのでしょうか。もういい加減、「お客さまは神様です」の呪いを解かねばなりません。

ヒドイ振る舞いをするモンスターは立場が逆になったときには、きっと「しょうがないよね、仕事だもの。お客様は神様だよ。やり過ごせばいいんだよ」なんて言って、心の中ではペロっと舌を出して、目の前にいる「昨日の自分」に心のない対応をする。思えば何の疑いもなく、私たちはこんな毎日をずっと送ってきたのです。何と不幸な世界でしょう。

最近はようやく「カスタマーハラスメント」(カスハラ)なんて概念が生まれてきて、事業者が従業員をダメージから守る施策を開始しています。カスハラ:消費者や客がその立場を利用して、事業者に理不尽な要求や謝罪を強要すること。こんなことが当たり前のことの様に横行することになった背景には、SNSなどによる個人の情報発信力の拡大がもたらした「不寛容」があると言います。

こういうモンスターの犠牲になったら、自分も誰かをその「不寛容」の犠牲にするのではなく、自分はモンスターにならない様にする。これをみんなが考えれば、世界は変わっていく様に思います。

「誰の犠牲にもならず気持ちよく生きていく」、それはここからしか始まらないと思っています。相手を恫喝して満足を得るよりも、対等な立場で問題解決を図ればいいだけです。その方がずっと早くて、ずっと上手いやり方です。それにモンスターにしても、きっと後味は悪いので。

ちょっと「犠牲」になることがあって、改めてこんなことを書きました。実際のところ、現場では「提供する側」は争えませんしね。小さなため息です。

そうそう、配送会社さんに「配送される側」がクレームを入れるというのはよく考えると「変」ですよね。だって、配送会社にとっての客、契約者というのは配送を依頼した者なのですから。

だから、本来は「配送される側」は物品を購入した先に「届かないよ」とか連絡をしないといけないのです。配送会社さんだって、「客の客」の犠牲にまでなってはたまったもんじゃありません。それにも関わらず、それもまた「サービス」として対応してくれる配送会社さんには改めて感謝です。それに今までのこと、ごめんなさい。

***
ブログランキングに参加しています。よろしければポチっとお願いします。やる気がでます。