今の職場は新宿にあるのですが、横断歩道で信号待ちなどをしていると、間違いなく私が最も年寄りです。しかもトリプルスコアぐらいで。とにかく、若い人だらけ。みんな早く家に帰ればいいのにと思ってしまいます。どこにもそんなに楽しい場所などないのですから。

以前のエントリでも少し触れたことがあるのですが、坂本貴志さん(リクルートワークス研究所)という方の書いた「働き方」「高齢者の労働」に関する本が大変に分かり易く、考えさせられることがたくさん内容に散りばめられているのです。

私が読んだのは「統計で考える働き方の未来-高齢者が働き続ける国へ」(ちくま新書)という本です。統計資料/統計データをこれに関する歴史的な経緯、因果関係のある政策や企業動向、実際に現場で起きていることなどの幅広い情報を用いて「統計データが持つ意味」を納得性高く説明してくれています。

その中で、高齢者が満足して働くには「無理なく役に立つ」ことが重要とされている研究結果(リクルートワークス研究所)のことが紹介されています。「無理なく」とは、①長時間労働ではないこと ②重い責任を負わないこと ③人から命令されずに働くこと なのだそうです。

これらを考えると、今、国と政府が目論んでいる「70歳まで継続して社員を会社に縛り付けておく」ことは悪手だと著者は言います。その理由として、先ずは「煩わしい組織の論理が渦巻く職場」に給料を下げ、役職や権限を剥がした高齢者を当て込むことにより本人のモチベーションが低下し、非戦力化してしまうということ。

更には、これからもどんなにITやAIによる自動化が進んでも無くなることはない「現場労働」の担い手として「高齢者」が大いに期待されており、これが「きちんとハマれば」少子高齢化による日本経済の低迷は避けられること。

この本の中でも触れられていますが、少子高齢化、年金問題(減額、受給開始年齢引上げ)、上がらない給与、ひどい重税感、いずれ姿を消すであろう退職金といったことを背景に「75歳まで働くのが当たり前」の未来が目の前まで来ています。

そんな中で高齢者を「企業内で囲っておく」のではなく、流動化させて「現場労働」にという声がこれからきっと大きくなるの違いありません。…そのとおりなんですけれど、これ、難しい問題ですよね。今までホワイトカラーで、事務仕事をしていた60歳のおじさん、おばさんが慣れない「現場仕事」に果たして耐えられるのかという大きな壁が立ちはだかっています。

警備、清掃、介護、配送… 背に腹は代えられないという状況になれば「頑張れる」人もいるでしょうが、それにしても「望んだ老後、イメージしていた老後」とは随分と違う様な。とにかく、私たちを待つのは「そんな未来」の様子です。


若い人たちに「早く家に帰れ」などというのは大変な暴言です。若い頃というのは「フラフラと家を離れている」のが仕事みたいなものですから。それに年を取ると専ら「家にいる」ことになってしまいます。それはそれで楽しいのですが。

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