「怒りを管理する」（anger management）が日本の企業でちょっとしたブームになっています。アメリカで1970年代に始まった心理トレーニングですが、既に日本でも「日本アンガーマネジメント協会」なるものができており、歴史も古く、随分と裾野の広い活動になっています。
最近の「アンガー・マネジメント」ブーム、特に企業での研修の実施の背景には、大別するに二つのことがあると私は思っています。
①パワハラ、モラハラなどのトラブル発生への予防
②怒りを管理することによる組織運営、個人のパフォーマンス向上への期待
多くの人にとっては、「怒り」は後味の悪い感情なので、これを何とかしたいというのは極めて原初的な悩みです。「一人ひとりが気持ちよく過ごしていれば、会社も上手くいく」という点では、上に書いた「②」の中に含まれることです。そして、私も「怒り」については、大いに何とかしたいと思っているのです。
日本アンガーマネジメント協会のWEBサイトには、アンガー・マネジメントの目的として、「怒る必要のあることは上手に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになる」と書かれています。ここで、ううむと唸ってしまいました。怒りとは瞬間爆発的な感情なので、この様なクレバーな切り分けなど、私にはできそうもありません。また、「怒り」とは、何らかの火種（負の感情）があって起きることなので、「火種ごと何とかする」が私のしたいことなのです。そんなことは無理でしょ？ だから、上手に管理するんでしょ？ とすぐに「用意された回答」が返ってくるに違いありません。けれど、上手くいくハズもないメソッドに騙された振りをすることで、自分に対して「怒って」しまうのでは本末転倒です。流石に年寄になって、自分のことはよく分かっているのです。それで、少し考えたのです。まぁ、コーヒーを飲みながら、大好きなロックやポップスを聞きながらのことですので、正確には「ぼーっ」と思いを巡らせた程度の話なのです。
それで、はたと気付いた訳です。怒り、そして、その火種である「誰かのことを嫌う／恨む」、「イヤな人を作る」、「自分と違う価値観や振る舞いが許せない」といった負の感情というのは、贅沢な感情なのです。やらねばならない目標があって、失敗が絶対に許されないという「背水の陣」にあったときに、怒るとか、誰かのことを恨むとか、そんな余裕あります？ シンプルに言えば、「必死」な人に邪念はないということです。思えば、昔、フルマラソンを何度か走ったときに、早くゴールしたい！以外のこと、私は一切考えもしませんでしたもの。途中、次の給水所は何キロ先？とか、セコいことは考えましたが..
そして、負の感情の多くは「比べる」から生まれる様に私は思うのです。自分の給料は国民の平均より上か下か、自分は会社の同期よりも出世が早いかなどなど、生きていれば毎日どの瞬間でも「比べる」の連続ですが、必死で臨む目標があれば、それが「負の感情」に転じることはないのです。「そうなんだ」でお終いです。だって、それ以上のことを考える余裕などないのですから。比べることを止める？ それはできない相談です。そんなことをしたら、自己には重さがないので中空に浮き上がって、バラバラに分解してしまいます。
負の感情に支配されて、時間を費やしたり、注意が散漫になっていたら、あっという間に人生は「GAME OVER」になってしまいます。そんな「つまらない」ことで、自分が一番望むものを得られなくなってしまうのです。それは、実にバカげたことです。「大事なことにネコまっしぐら！」という極めてシンプルで、当たり前のことが私が欲しい答えだったのです。
既に「老人」の正式メンバーである私ですが、まだまだ「やりたいこと」「よりよくしたいこと」はあります。（夢は実現するまで内緒です） 何だか意味もない余裕を見せて「いいんだよ、もう年なんだから無理せずにやれば」と自分に言い聞かせている様ならば、結局、チャレンジしない方がまだマシなのです。我ら老人は目標を達成するのに二つのハンディを背負っていることを忘れてはなりません。最初のハンディは衰えていく「頭」と「体」です。そして、二つ目のハンディは限られた時間です。どちらも致命的なハンディです。だから、本気で成し遂げたいならば、「背水の陣」で臨まなければならないのです。若い人たち以上につまらない感情を持つような余裕など無いのです。
もう10年も前になるでしょうか、全身麻酔をして手術を受けたことがあります。そのときに私は「あぁ、死というのはこういうものなんだな」と貴重な悟りを得ました。突然にBlack outして、お終い。やはり、人間、「生きててなんぼ」です。ならば、楽しくなくてもいいけれど、つまらない考えに支配されずに時間を過ごしたいのです。
最近、少し、モヤモヤしていたことがあったのですが、おいしいコーヒーとデビット・ボウィの名曲のおかげですっきりしました。デビット・ボウィと神の子パット・メセニーの共演ナンバー、カッコいいですよ。
