どこかの学習塾のTVで、子供の体のどこかにある「やる気スイッチ」を塾講師が押すと子供が俄然やる気を出すというものがありました。多くの中高年の場合はスイッチが壊れているので、どんなに押しても「スカッ」という空しい音と手触りしか得られないのです。まぁ、下手にそんなものが作動しない方が本人も周囲も幸せなんですがね。
一方で幾つになっても人は「チープなスリル」に身を委ねてしまいます。例えば、車を運転して週末の買い物に行く。少し先の信号が何となく青から赤に変わりそうな気配がしているので、アクセルを踏み込んで何とか通過しようする。けれど、少しヤバいタイミングで信号は無常にも「黄色」になってしまう。ブレーキを踏めば十分止まれる距離なのに、更にアクセルを踏んで通過時には信号が「赤色」であっても強行突破してしまう。こういうことって、あるでしょ。
仕事の場でも、日々の暮らしにおいても、実はこういうことが頻繁に起きている様に思うのです。理屈ではなく条件反射的に「チープなスリル」の場に突入してしまいます。これ、ますます判断能力が鈍り、失敗をしてもリカバリーすることができない中高年としては「何とかできないかな」と考えているのです。いつも後悔はするんですよ、赤信号を突破すると。
すると、あったんですよ、この悪いクセの直し方が。何となく「病気扱い」されていることが気になりますけどね。
「条件反射制御法」といって、下総精神医療センターの先生が独自に編み出した嗜癖全般に対する治療法なのだそうです。
‘条件反射制御法は薬物乱用や飲酒、ギャンブル、万引き、痴漢行為、盗撮、ストーカー行為、放火などの反復する行動、並びにパニック障害、反応性抑うつなどの望まない自律神経や気分の状態、パターン化された業務動作の不適切な状況での再現を強力に抑制する技法です。’
※引用:第16回条件反射制御法研修会案内ページ
詳しくは書きませんが(理解できていない)、自分に「おまじない」(私はそれができない)を掛けて、疑似体験を繰り返し、「それをやっても報酬が得られない」ことを自分に教え込むといったものかと思います。条件反射的にヤバいことを繰り返してしまうといった場合には、「悪いクセ」なんて言ってないで、治療が必要なんですね。(興味のある方はきちんと情報を調べて下さい)
さて、このエントリで私が書こうとしていたものは、こういう「治療法」ではなく、「馬鹿げたGO!」をしてしまいそうなときに「STOP!」をかけてくれる、そう「正気に戻してくれる」魔法のクスリのことなのです。「クスリ」といってもどこか薄暗いところで売っている様なもののことではありません。実際には「クスリ」でなくとも、「家族の写真」でも、「結婚指輪」でも、「コーヒーを飲む」でも何でもよいのです。そういう「お約束のもの」のことなのです。
きっと誰でもこういうものを用意していると思うのですが、中高年こそ、これが必要だと最近は思っているのです。私の場合、「無理だけどGO!」は昔よりも今の方がきっと多いのです。暴走老人ですな。
それで、私の「正気に戻るクスリ」とは何か言えば、それは小銭入れている「小さなもの」なのです。大したものではありませんが「ここまでの人生」のことを思い出させてくれるものなのです。これを手にして、それは「これまでの私/これからの私のすべてを賭けてでもやる価値があることなのか」ってね。
これだと条件反射的な「チープなスリル」には間に合いそうもないので「無理な信号突破」をしないためには、やはり「そんなことをしても何もならないでしょ」という自分への言い聞かせを繰り返しする必要がありそうです。本当にいい年して何だかな。