人の不正は許せないけれど、自分がその「おこぼれ」に与ることができるならば「世の中そういうもんだよ」などと自分のことを許してしまう。自分の思い通りにいかないので、他人の考えをけなしたり、そもそも「お題が間違っている」と論点をすり変えてしまう。相手によって自分の大きさを変えて、尊大にも卑小にもなる。どうだ!「小さい人」のことなら、幾らでも例示することができるぞ! よく知ってるからね、まるで自分のことに様に。あー、ちっちぇーオヤジ。
とは言っても、そんな「小さな人」(ピグミンみたいなもん)が心の中でわいわい騒いだり、凹んだりしているからこそ毎日が変化に満ちて、退屈しないのかも知れません。これに比べて、天使でいっぱいの天上、きっとつまらないところなのです。仕事帰りに飲みにいっても「あー、あの人は素晴らしい」とか「あれはありがたいことでした」などと、互いにしみじみとするばかりで少しも楽しくない。やっぱりここは上司の悪口で盛り上がらなくちゃ。いろいろと有難いなぁ、上司って。ネタにすることもできちゃう。
『「器が小さい」と思う上司の行動トップ10』なるアンケート調査を見つけました。困った上司を持て余している人からすると「あるある」で、今一つ部下が懐かない上司にとっては「胸にぐさり」の内容かも知れません。このアンケート回答から「小さな人」のことを考えてみます。
※出典:プレジデントウーマン 「器が小さい」と思う上司の行動トップ10(2017.5)
トップ10の中からトップ5を書き出してみます。( )はかなり小さいと思う人の割合です。
♪第5位 ピンチに際してあたふたする(女性 49.6% 男性 39.0%)
♪第4位 視野が狭い(女性53.8% 男性40.8%)
♪第3位 上にペコペコ、下にエラそう(女性76.0% 男性64.2%)
♪第2位 成功はすべて自分の手柄にする(女性77.7% 男性65.6%)
♪第1位 自分の非を認めない(女性83.0% 男性64.0%)
ピンチが訪れてあたふたしても、「その先」が読めなくても、まだ部下から「しょうがないなぁ」とか言われるだけで、「器の小さい人」とはそれ程に断じられることはありません。けれど、「振る舞いが美しくない」場合には「ちっちゃい人だなぁ」などと大多数から思われてしまうのです。たしかに3位~1位の様な振る舞いをする上司に共通しているのは「自分可愛さ」なのです。そこには、強いチームを作って組織業績を拡大し、部下を育てていくといった部下が期待する「頼もしい現場のリーダー」の姿はないのです。
昔、まだ新卒入社して間もなくの頃、営業レビュという「予算(目標)の達成度」を上司が部下に確認し、達成するための方策を問い質す会議の場で、発したエライ人の名前は忘れましたが、こんな言葉を言われたことを覚えています。「鏡を見ろ、責任者はそこにいる」。
確かに正論だと思いますし、目標が達成できないことの責任は誰にある訳でもなく、最後は自分にあるんだ!ということを強く自覚させるためのハッパを掛けたのだと思います。
けれど、みんなそんなことは百も承知で、だからレビュの席でキツイ言葉を投げ付けられても、ひたすらに耐えていた訳です。今思えば、その時に「一所懸命お前が頑張っているのはよく分かった。これを成果にするためにどうすればいいか、一緒に知恵を絞って頑張ろうぜ」などと言ってくれたら、みんな瞳がうるうるして、「ついていきます、どこまでも」などと感激し、力が湧き出たに違いないのです。
そのエライ人が「小さい人」だとは言いませんが、その日の「鏡を見ろ、責任者はそこにいる」という言葉からは、「オレの組織の目標達成が危ういのはお前たちの頑張りが足りないからだ」というメッセージしか聞こえてこなかったのです。まぁ、こちらも「自分は鏡を見ないのかね」などとこそこそ言っていましたけどね。
自分の頭の中の「小さい人」を少しでも黙らせるためには、兎にも角にも「自分可愛さ」をうまく制御することが必要であることが分かりました。もう少し若い頃にどうしてそれが実践できなかったんだろう。だって、それは私が「小さな人」だったから。救われない話だなぁ。