天ぷらそばが大の好物です。海老の天ぷらがどんっ!と乗っているような立派なものではなく、駅の立ち食いそばにある「かき揚げ」が乗ったものが好きなのです。一杯400円前後の値段で、お店の圧倒的なエースである「天ぷらそば」です。
店により味の優劣があるのでしょうが、私は基本として、どんな天ぷらそばでもよいのです。ただし、例外的に「これはいけません」というものもありますが。 これまでの人生で恐らく500杯は食べてきたのです。かき揚げをそばの海に沈め、さくさくの部分とじんわりと汁を吸った部分が混在する状態で、熱々のそばと一緒に口の中に入れたときの幸せといったら、正に極楽です。随分とお手軽で安価な極楽ですが、今でも月に何度かはこれを食さないと激しい渇きを覚えます。
「かき揚げが乗ったそば」が登場したのは今から300年程前の江戸時代からとのことなので、実は大変に歴史のある食べ物です。その頃から、これが連麺と日本人に食べられてきたかと思うと灌漑深いものがあり、この食文化を未来永劫伝えていかねばならないと思うわけです。
天ぷらそばに関して特別な思い出もないのですが、子供の頃からずっと愛してやまないのです。ちなみに、これは「天ぷらうどん」でも、「天ぷらきしめん」でもダメなのです。そばの食感と「さくさくとしっとりが混在したかき揚げ」だけがなし得る奇跡なのです。さらには、天ぷらそばには余計な具が極力が入っていないことが好ましいのです。サービスとしてワカメがどっさり入っていたり、月見にしてもらったりするとがっかりしてしまいます。
さて、どんな天ぷらそばでもよいとした割りには、好みと「これはいけません」があります。好みは、玉ねぎが多目で紅しょうがが入っていて、小さなエビなどが混ざっていれば言うことはありません。一方でダメなものは、高温の油で揚げたのか、いわゆる爆発した状態のかき揚げです。かりかりと音がするほどにクリスピーな天ぷらがそばに乗せられてくることがありますが、これはそもそも天ぷらではないので、食べる前から失格なのです。家の近くにある立ちそばが、残念なことにこの爆発した物体が乗せられて提供されるので、ここには最早立ち入ることはありません。
天ぷらそばが食べたいとなったら、ステーキもすしもフレンチもまったく眼中には入りません。猫まっしぐらとばかりに駅の「立ちそば」にむかうのです。 あぁ、また、天ぷらそばが食べたくなってきました。