既に35年以上が経過しましたが、会社に入って最初の社員旅行のことはよく覚えています。私は営業部署に配属されており、社員旅行は「営業ノリ」が炸裂し、夜の宴会から翌朝近くにみんなが酔っ払って撃沈するまで、参加した50名ほどがハイパワーで大騒ぎを続けたのです。

生意気にも新人ながら「会社っていいところだな」と思ったのです。お酒を無理強いする人もなく、何か説教をする人もいず、今思えば奇跡的によい組織だったのかも知れません。
けれど、あれがどこだったのかはまったく覚えていないのです。遠い夢の彼方です。

インセンティブ(ご褒美)として、会社のお金で社員全員がハワイに行くといった社員旅行がある一方で、会社から一部補助が出るにしても、基本は参加者がお金を積み立てて費用にあてて出掛ける社員旅行というものがあります。
私が早期退職前に勤めていた会社は後者の方で、行き先もハワイではなく、伊豆だったりした訳です。東京の会社は何かというと伊豆に行くのです。今は結構に錆びれていると聞いて心配をしています。伊豆には昭和のサラリーマンの魂が眠っているのです。

それでは次の二つの調査から「社員旅行」の現在位置を確認したいと思います。きっと、目を覆いたくなるような惨状が広がっているのです。ちらっとな。
※出典:産労総合研究所 「2020年 社内イベント・社員旅行等に関する調査」(2021.1)
※出典:マイナビ転職 【コロナ禍での社内行事】(2021.4)


<社員旅行の実施率> 
(産労総合研究所)
27.8%。前回調査(2014年:36.8%)から大幅に減少。また、企業規模では1000名以上の企業では17.5%、299名以下の企業では40.9%。企業規模が大きくなると実施率が下がる。

まだ3割程度の会社で社員旅行が生き延びていたことにびっくりです。すっかり、絶滅、多くても10%程度の実施率と思っていました。規模が小さな企業が「福利厚生」の一部として、継続実施しているみたいです。しかも、社員旅行を実施している企業の中、約40%が海外旅行の経験ありとのことで、うらやましい限りです。転職の際に、仕事内容よりも、待遇よりも「今年の社員旅行、海外行っちゃいます?ハワイですか?グアムですか?」などと確認をしてしまいまそうです。えっ、コロナ禍でそれどころじゃない? 

<中止になってうれしかった社内行事:第3位> (マイナビ転職)
1位 会社規模の宴会、2位 部署単位の宴会、3位 社員旅行

コロナ禍って、結構、これまでの働き方で「キライ」だった社内行事を一掃してくれたことが分かります。それにしても、どうして、「みんなキライ」と思っていることをずーっとこの国の企業はやり続けているのでしょう。本当に不思議です。(半)強制参加の宴会さえ無くせば、特に若い人の会社定着率ってそこそこに上がりそうです。ネットを見てると「社員旅行に行きたくないから会社を辞める」って割と書き込みがあったりします。覚悟、できてます。
ちなみに「社員旅行が中止になってうれしい」と回答した「一番比率が高い年代」って50代なのです。えーっ、お父さんたち、社員旅行に行きたいんじゃないの? まぁ、ムリして若い社員に話を合わせたり、罰ゲームとかで恥ずかしい思いをしたりというのは中高年には辛いかも知れませんね。プライドの高さは東京タワーよりも高いですしね。(そこそこ高いという意味)

<社員旅行の断り方>
●避けられないイベントがある(資格試験、結婚式など) ●健康上の問題がある(乗り物酔い、持病など) ●泊りで家を空けられない(介護、ペットなど)
このエントリを書いていて、嘘をついてまで「行きたくない」なんて社員に思わせるイベントというのは、そもそもやってはいけない様に思ってしまいました。だって、どのネットのページでも「上手く嘘をつきましょう」とか「行きたくないとはっきり断るのは最悪です」とか書いているのですから。本気かよって思ってしまいました。
「嘘をつく」って、本当に人間を苦しめるんですよ。百害あって一利なしです。皆さん経験があると思うけど。言うときは卑屈になるし、一度言った嘘は墓まで持っていかねばならないし。それに「いくらでも嘘をつける人」がいる一方で、「嘘をつくことができない人」もいるのです。
これからの時代、誰かが社員旅行に一大革命を起こして、「行かないこと大歓迎!」「欠席の理由なんて言う必要なし」なんてことをスタンダードにしてくれるとよいですね。それに、行くなと言われたら、行きたいものですよ、きっと。

いささか社員旅行に関してネガティブなことを書いてしまいましたが、仕切り直して、社員旅行といえば「手作りの企画」です。巧みに会社の事情などを折り込んで、組織の皆を適度に「イジり」ながら、宴会の中盤で行われるアレです。本当によく練られていて、「このくらい真剣に仕事に取り組んでくれればね」などという組織長のため息が聞こえてきます。

幾つかのチームに分かれてクイズをしたり、ゲームをしたり。そして、最後の表彰式と罰ゲームまで、息つく間もなく企画は進行していきます。新人から定年間近のベテランまで、一緒になって大騒ぎです。もう、あんな時代が戻ってくることはないんでしょうね。

あのね、早期退職とかするとね、昔はイヤだった社内のイベントも脳内で美化されて思い出すんですよ。それじゃ、OBだけの「元社員旅行」ってのが企画されたら、行くかって? 
行ってもいいけど、誰が誰だか思い出せなくて、微妙な雰囲気になるんですよ、きっと。「よう、久し振り! ところで、誰だっけ?」ってね。
胸にネームプレートを付けて、更に、「昔はこんな仕事をしてましたカード」を首からブラ下げないと、大半の人に「初めまして」って言っちゃう。何だか面倒だなぁ。

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